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施工事例

インドネシア共和国大使館

GRAPHIC CONCRETE 2024.05.13

GC・グラフィックコンクリートとは凝結遅延剤を応用した洗い出し技法で、PCコンクリート面に自在にパターンを施すことができるフィンランド生まれの新しい技術です。

今回は在日インドネシア共和国大使館での採用実績をご紹介します。

洗い出し

設計 : 黒川紀章建築都市設計事務所

施工 : 大成建設

製造 : 高橋カーテンウォール工業

色 : レッドベージュ(アーキコン、特注色)

パターン : オリジナル(GCBasic)

竣工年 : 2023年

今回、グラフィックコンクリート(以下GC)仕上げを施した外壁PCについて設計に携わる平田氏アリア氏ご両名ならびに、製作された高橋カーテンウォール工業加藤氏から採用に至るまでのストーリーを竣工した大使館内で伺う機会をいただきました。

 

インドネシア大使館 外壁GC インタビュー
2023 年11月19日
@在東京インドネシア共和国大使館(東京都品川区東五反田5-2-9)
平田啓介氏(黒川紀章建築都市設計事務所)
Arya Abieta 氏(建築家、PT.WASTU ADI OLAHRUPA)
加藤慎一氏(高橋カーテンウォール工業)
山口風花(ビベル)
田中竜太(ビベル)

グラフィックコンクリート
グラフィックコンクリート

はじめに

GCは、プレキャストコンクリート製品に最適化された洗い出しで、専用のGCシートにプリントされた模様(パターン)を洗い出しで表現する技術です。
コンクリートの持つ風合いを活かしながら、きめ細かい表現ができる洗い出しによって独自の表情をPC版にそのまま表すことができます。見る人の目を引き付ける美しさ、コンクリートの仕上げ面に加工することで経年変化しない長寿命な仕上げであること、そして材料の自然な風合いを残せること、が特長です。 気候的に生産性が高いPCが盛んな北欧フィンランドで開発された GC は世界中の建築家やデザイナーのデザインツールとして新しいファサードデザインの領域を確立しています。

平田さん(以下平):他国の事例では凹凸が深いようにも見えるのだが、GC洗い出しは世界共通で標準的に1 ミリ前後だと聞く。

グラフィックコンクリート

アリアさん(以下ア):GCは使い方の汎用性の高い仕上げであると印象を受けました。たとえば3次元のように奥行きのある表現でもフラットな仕上げ面に施すことができる、視覚的に立体的な表現をわずか 1 ミリほどの凹凸でまるで壁紙のように壁面の表情を演出できる、というのが面白い。 高温多湿なインドネシアでは、カビや苔などが付きやすく、コンクリートはメンテナンスしやすいようにできるだけフラットで凹凸のないツルツルな仕上げ面が好まれる。熱帯気候のエリアでの採用実績はありますか?

 

田中(以下田) : GC を採用した事例はまだないと思うが、今後インドネシアでも採用できると思う。日本では製造後に防汚対策として表面保護剤を塗布することが通例としてあります。おそらくアジア諸国では同様に対処することが有効です。ちなみにフィンランドでは気候環境による保護は必要としないようだが、人による落書きからの保護を目的とする保護剤は使用しているとのことです。

 

平:今回の製作物は非常に安定した結果が得られたと思う。今回製作された 160 枚あまりの外壁PC材は、非常に均質な仕上がり感になっている印象を受けたが、GCの安定した均質性は、工場製作ではどのくらいの安定性でしたでしょうか?

加藤さん(以下加):製造時の損量について明確な数量は公表していないが、たしかに製造時の損率は少ないと工場の製造チームから聞いています。これは、当社がこれまでいくつかの GC 仕上げプロジェクトを経験済みであったからこその、品質管理のなせる業であると自負しています。GC 仕上げはほかの仕上げと比較してむしろ均質性よく生産するうえでのリスクは高いと思います。GC仕上げでは屋根下での、天候によって製品毎の仕上がり色差が影響を受けないような養生期間の管理など、これまでの製造実績から当社独自の製造ノウハウを積み上げた結果、現在の管理方法を取っており、安定した製品を提供できています。

グラフィックコンクリート

PCカーテンウォールについて

ア:日本のPCカーテンウォールは重厚につくられ、使用する鉄筋も太くて使用する数量も多い印象がある。これは他国のそれと比較しても特異なほど強固であると思う。非構造壁なのに重厚に作られているのはなぜなのでしょうか?

平:たしかに他国での設計を行っている自身の経験からみても、たとえば日本の現場打ちコンクリートので鉄筋のボリュームは比較にならないほど多い。

加:PCカーテンウォールに関しては、国内基準の耐震性、耐風圧性などの性能基準値要求が高いという点からです。

平:国内のPCカーテンウォールはファスナー部にロッキング機能が付いており、地震時にもパネルが全体に可動することで振動を吸収することができるようになっている。

ア:ロッキング(可動)することが大事なわけですね。それはつまりパネルのジョイントつまりファスナー部が大事であって、パネルは重厚長大ではなく、むしろ薄く軽量化するほうが理にかなっているのではないでしょうか? 重くなると、ジョイント(ファスナー)にもより強固な剛性が求められるのではないでしょうか?

加:確かに薄くて軽いほうが各所への負担も軽減されるはずですが、それでも厚く重たいPC版が性能の高さとコストとのバランス面からの評価を得て広く採用されています。そのPC版ファスナー部も強固なものにはなります。耐震性能は国内で発生した有数の大地震でも証明済みですのでご安心ください。

 

グラフィックコンクリート

バテックから建築文様へ

田 : アリア氏は建築家で母国の伝統的な建築に精通されている。Heri Akhmadi在日インドネシア共和国大使により召喚され、大使館の建替え工事に関わる外壁模様デザイン、アートワークなどの協働デザイナーとして黒川事務所とコラボレーションされたわけですが、そこでのストーリーを聞かせてください。

グラフィックコンクリート

ア:先ず、黒川事務所の設計案として出ていたのがバティック(伝統的な着物の文様)から代表的なパラン柄もモチーフにインスパイアされた文様でしたが、私は建築のファサードに伝統的な着物のパターンより伝統建築のパターンがよりふさわしいと考えました。そこで4つの地域に伝わる民俗的な伝統建築のパターンのよりどころとして①トラジャ(スラウェシ) ②ダヤク(カリマンタン) ③バタク(北スマトラ) ④パダン(西スマトラ) に由来を持つ文様デザインを平田さんに提案しました。インドネシアはご存じの通り、1万を超える多くの島々からなり、民族文化も異なるなか「多様性の中の統一」がスローガンとして掲げられています。建築にも多様な文化が反映されており、それが文様にも表れています。 今回選ばれたパダンに伝わるラモラモ文様は、西スマトラに居住するミナン族のエリアにみられる伝統的な建築文様です。ミナン族は交易を主とした生計を立てる、華僑のように移民の文化があり故郷を出て暮らす文化がある、在日の「故郷」である東京の大使館に帰郷の想いを込めたシンボリックな建築を表現する案を平田氏と対話を重ねながら、GCにはパダン地方のラモラモパターンをモチーフに採用することになった。

GCシート

グラフィックコンクリート

平:インドネシアの典型的なバティックパターンではなく、建築的にも多様な文化からストーリーのあるものを採用できた。ラモラモパターンのディテールには蝶々やコガネムシをモチーフにした柄が美しく配列されていて、それを踏襲しながらパターンに建築的なディフォルメがなされた。 その背景には歴史的に強い影響のあった欧州(オランダ)から受け継がれる文化の遺産にまでつながるものではあるらしいがここでは割愛する。

グラフィックコンクリート

近代建築について

平:建築にパターン(装飾)を施すことについて考えるとき、近代建築を学んできた我々にはパターンを施すというのはある種のチャレンジングなことであって、伝統建築と近代建築の違いをどう考えるのか、アリア氏の考えを伺いたい。

ア:近代建築を核とした姿勢、思想は近年のインドネシアでも一般的であると思う。その中で、私のように伝統建築を研究しているのは一部のアカデミアでしか行われていない。しかしこのような技法を使って伝統的なエレメントを近代建築に埋め込むことは非常に有効だと思うし、この事例を帰って皆に紹介するつもりだ。一方で日本の伝統建築を表現することは比較的容易である。例えば日本の桟木のイメージに代表されるシンプルで整然とした水平ラインを空間に取り込むことで、誰もが日本建築を感じることが出来る。それに対してインドネシアの建築は多様性に富んでいるため、ある単体の要素によってインドネシア建築全体をシンボライズできるものがない。そう考えると日本建築が羨ましい。

平:10年前にGCを加藤氏に紹介されたときには単純にコンクリートに模様を付ける技術と感じていたが10年を経ていま、建築の文化や表現の幅を広げる有効な手段であると認識を新たにしている。

ア:建築の世界共通のパーツであるコンクリートは、時代の要請で今後ますます緑化など環境配慮的な付加価値を求められてくるはずだが、それはスチールよりも優位性があるはずだと思う。

平:伝統建築は木を刻む匠の技や装飾を施す職人芸によって支えられてきたが、近代建築はそれらを登用することが難しい、しかしそのエッセンスを現代的な工法で取り込むことを可能にしたことは、面白いと思う。今回採用したファサードは西陽をカットする目的があるが、移ろう外光の当たり方でパターンが美しく表情を変えながら映えている、そして陽が落ちたあとの建屋内からの照明光が帰郷に思いを馳せるラモラモパターンをぼんやりと照らしていることは竣工写真で気づいたうれしい風景であった。

グラフィックコンクリート

グラフィックコンクリートはコンクリートをキャンバスに自在にデザインできるツールです。

土地や国の風土、会社などの歴史やストーリー性を込めたファサードデザインでオリジナリティの高い建築になります。

ぜひ「お問合せ」よりお問合せください。

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